どうもこんにちは、根岸です。
今回は6話目でございます。
6.「モーターコントローラー」
スマホで連続して撮影が可能な速度である1秒に1コマから2秒に1コマ程度の速さでフィルムを動かすには、ウレタンワッシャーのキャプスタンをどれくらいの速度で回転させる必要があるかを考えてみます。
スーパー8のフィルムには、およそ4.23ミリの間隔でパーフォレーションがあり、これが1コマの長さになります。2秒に1コマの場合は1分間に30コマ、毎秒1コマなら1分間に60コマですから、1分間に動かすべきフィルムの長さは
4.23 × 30 = 126.9 (2秒に1コマの場合)
4.23 × 60 = 253.8 (1秒に1コマの場合)
となり、毎分127~254ミリ、フィルムを動かせばよい計算になります。
フィルムを動かす直径12ミリのウレタンワッシャーの円周は
12 × 3.14 = 37.68
なので、ワッシャーの変形やフィルムがスリップすることを考えなければ
126.9 ÷ 37.68 = 3.37
253.8 ÷ 37.68 = 6.74
つまり必要な回転数は毎分3.4~6.7回転ということになります。
タミヤの4速ウォームギヤボックスHEの仕様では、ギヤ比をいちばん高くして最低速の設定にしたときにモーター電圧3Vで7rpm(毎分7回転)となっているので、そのままだと毎秒1コマより少し速いくらいになるはずです。
これがモーターとギヤの組み合わせだけでできる最低速ですが、はたしてこの速度でスマホが追従できるかどうか怪しいところなので、さらに遅く動かしたりスピードを微妙に調整することができるように、電気的にモーターの速度を調整する「モーターコントローラー」を使いました。
使用したのは秋月電子通商の「DRV8832使用DCモータードライブキット」です。
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-06497/
これは自分でハンダ付けする必要がある組立キットですが、ICやコンデンサなどの小さい部品は最初から基板に実装済なので組立はそれほど難しくありません。
最大動作電圧6V、モーターの最大電流 1Aというのも今回の目的にはちょうど良い仕様です。これを使うことで、モーターが回転するスピードはスマホ側のアプリの動作状態を見ながらボリュームで自由に設定できるようになります。
元々どこかにモーターをON/OFFするスイッチが必要だと思っていたのですが、このキットは基板上にモーターの正転/停止/逆転を切り替えるスイッチがあり、速度調整用のボリュームもついているのでほかにスイッチやボリュームを用意する必要もなくなります。
またこの基板には、モーターのための電源回路が簡単になるという利点もあります。
コマ撮り中は長時間カメラを動かす必要があるのでスマホにUSBの電源をつないだまま使うことになります。せっかく電源があるのでモーターも同様にUSB電源を利用して動かしたいところですが、USBの電圧は5Vなのに対して今回使用する260タイプのモーターは乾電池1本または2本直列に相当する1.5~3.0Vが適正電圧範囲なので、5Vでは高すぎてそのまま直結するわけにいきません。
最高速にしたときでも適正な電圧の範囲内でモーターを回すには、モーター用だけに3VのACアダプターを用意する、低損失の三端子レギュレーター(LDO)を使って5Vを3Vに変換する回路を作る、モーターに直列に抵抗やダイオードを入れる、などの方法も考えられますが、このモータードライブ基板にはモーターを回す速度の調節とは別に、モーターに供給する最大電圧も基板内のボリュームであらかじめ設定できる機能があります。つまりUSB電源から基板に対して5Vを供給するだけで、モーターの電圧については心配しなくても最大3Vまでに制限しつつ可変速にすることができます。
接続方法はキットの組立説明書の「接続例」にある図の通りで、モーターを回すのに必要な配線は5V電源の+と-で2本と、モーターにつなぐ線が2本だけです。
基板に電源を接続するときはプラスマイナスを間違えないように注意が必要です。
モーターの配線については基板上に回転方向を切り替えるスイッチがあるので、極性は気にしなくても大丈夫です。
基板の調整は、組立説明書の「モーター最大電圧設定」のところに書いてある例と同じように、デジタルテスターで測りながら0.75Vにセットすればモーターにかかる電圧は3Vまでに制限されます。
参考入手先
DRV8832使用DCモータードライブキット
秋月電子通商 東京都千代田区外神田1-8-3 野水ビル