どうもこんにちは、根岸です。
さて、今回は12話目でございます。
12.「ガイドローラー」
テレシネ中に8ミリフィルムの小さな画面の位置を正確に決めて、そこにフォーカスを合わせておくために、フィルムが通過するビューワーの穴はかなり狭く、幅も厚みもフィルムが通れるぎりぎりの大きさになっています。
(フィルムゲートの断面図、フィルムは手前↔画面奥方向に動く)
これは映写機では「フィルムゲート」に相当する部分です。位置を決めるにはフィルムに全く触れないというわけにはいかないのですが、フィルムに何かが触れた状態で動かすとどうしてもそこに擦り傷がついてしまうので、画面に影響のないフィルムのふちの部分の僅かな面積だけで接触してフィルムの位置を保持するようになっています。このような構造のため触れている部分だけに圧力が集中してどうしても摩耗しやすいので、どの映写機でも金属かそれ以上の硬い材料で作られているのが普通です。
今回のテレシネ機ではこの部分を3Dプリンターで製作しているので材質は紫外線硬化樹脂です。プラスチックなので摩耗しやすいですし、削れるとその樹脂がフィルムに付着したり画面上のゴミになる恐れもありますから、フィルムがビューワーをできるだけ削らないような工夫をした方が良いでしょう。
その点から考えるとビューワーの入り口ではフィルムを真横から水平に導入するのが理想的です。巻いたフィルムの直径は変化するので、リールから直接ビューワーにフィルムを持ってくると、フィルムがビューワーに入る角度も変化してしまいます。そこでガイドローラーを使って角度を固定します。
下の図では右側の供給側リールから出たフィルム(赤線)は、最初のローラーの下を通ってから次のローラーの上を通って、水平にビューワーに入ります。わざと蛇行するようになっているのは、フィルムにバックテンションを与えてビューワー内でフィルムが弛まないようにしたつもりですが、成功しているかどうかは分かりません。
(ガイドローラーの配置をMDFパネル側から見た図)
ビューワーとセンサーを水平に通過した後のキャプスタン部分では、フィルムがピンチローラーに若干巻きつく形にするとフィルムの幅方向の走行ブレを減らす効果があり、良好な結果が得られたので、ピンチローラーと巻取りリールの間にも、フィルムを下から持ち上げる形で1個ガイドローラーを設けています。これでリールに巻き取られたフィルムの量にかかわらず、ピンチローラーから出るフィルムは一定の角度が保たれます。
これはセッティングの一例ですがベストとは限らないので、興味のある方は有孔ボード等を利用して色々と位置を変更して実験してみるのも面白いと思います。
今回はビューワーの入り口直前のローラーだけサイズが若干小さいものを使いましたが、これは試作でいくつか作ったものを流用しただけなので、取付スペースに余裕があれば特に大きさにこだわる必要はないと思います。
(ガイドローラーの形状)
今回使用したガイドローラーは3Dプリンターで作ったもので、フィルムの走行を妨げないようにフィルムの幅よりも若干広い間隔で「つば」が両側にあります。
ローラーはフィルムが動くのに追従していっしょに回転するのでフィルムに傷はつきにくいはずですが、できるだけ画面を擦らないように、フィルムの縁だけが当たるような窪んだ糸巻型の形状になっています。
ローラーの両側につばがある形状からそのままだとどうしてもアンダーカットができてしまうため、3Dプリンターで出力するにはサポートをつける必要が出てきます。そこで今回は一個のローラーを二個のパーツに分割して出力しました。
パーツは接着ではなく嵌め込み式です。表面はなるべく滑らかにしたかったのでDLP方式の3Dプリンターで出力しましたが、FDM方式ではそのままだとパーツをうまくはめ合わせることができないかもしれません。
回転体ですから断面図だけで3D-CADで簡単に描けるので、自作するのは難しくないと思います。その場合「つば」の間隔をフィルムの幅にあまりぴったりにしてしまうとフィルムがローラーの底まで落ちずにひっかかります。「つば」の間隔は最低でも、実測で8.5ミリ程度必要だと思います。
ローラーをMDFパネルへ取付けるのは、長さ35ミリのM4六角穴付ボルト、ナット、ワッシャーを使って取付けました。フィルムの幅方向のブレよりも、フィルムの通る「高さ」をコントロールすることが目的なので、ローラーはかなり緩い感じで遊びを持たせ自由に回転するように取り付けてあります。
(ガイドローラーの取付状態)
このガイドローラーの3Dプリンター用データは下のリンクからダウンロードできますのでご自由にご利用ください。
https://firestorage.jp/download/5b2dbeef16abc754c8879fb7868c6c555a1c431c